「おみーさん」のこと

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貞光町の町屋で暮らして、もっともなじみ深い味が「みそ」だろう。
東京の雑煮はすまし仕立てだが、貞光ではみそ仕立てだった。
そして徳島県全体を見回して、もっとも代表的なみそが「御膳みそ」で、
これを鑑み、蜂須賀家が美濃尾張から来たために
徳島にみそ文化が育ったなどという説があるがいかがなものだろう。
貞光にはまだ麹屋さんが残っている。
どなたか貞光で民俗学的なフィールドワークをやっていただきたいな。
さて、そのみその話でいちばん気になる存在が「おみーさん」だ。
この「おみーさん」という言語が気になって致し方ない今日この頃なので、
とりあえずメモ的なものを書いてみる。
文章ではなくメモなのであしからず。

さて、我が家では商家の特殊性から、昼にみそ汁を飲んでいたはずで、
これもちゃんと文字で残しておかないといけない。
実は朝は乳母車を押して行商をしていた
“きたぐちさん”というおばさんからパンを買って食べていた。
“きたぐちさん”の乳母車には油揚げや豆腐、菓子パンやうどん、
アサリなども積まれていた。
このアサリのなかからツメタガイを見つけて大いに喜び、
遠い海を思ったものだ。
要するに、商家の朝は忙しく、
商家でも勤め人のいる家庭は違うかも知れないが、
我が家では、みそ汁を作らなかった。

朝、「しゃえんじ」などで取ってきた菜などを具にみそ汁を作った。
注/「しゃえんじ」とは、町屋で家からそおれほど遠くない場所の
自家用野菜の畑のことで、たぶん漢字は舎園地。
小学校の頃は昼ご飯を食べに一度帰宅して、また学校に戻っていた。
そしてたとえば、学校から帰ってお腹がすいたときに、
この余ったみそ汁と、残りご飯で作ったのが「おみーさん」だ。
いちばん一般的な言い方が「雑炊」であり、別名「おじや」とも言う。

おもしろいのは明治に生まれ、美馬町(現美馬市)の旧家で育ち
貞光町の商家に嫁いだ祖母はみそ味の雑炊を「おみーさん」といい、
そば米で醤油仕立てにしたものを「そば米雑炊」と言った。
どのような定義で「雑炊」と「おみーさん」を使い分けていたのだろう。

『ふるさとの家庭料理 第3巻 雑炊 おこわ 変わりごはん』(農文協)
で調べると隣の香川、愛媛では「雑炊」という言葉が見受けられ、
徳島県では「おみーさん」なのだ。
「おみ」という言葉は京都府、大阪府などにある。
貞光町の方言というか言語の特徴は
「おひさま」と言わず「おひーさん」となるなど
音引きがつき、「さん」を語尾に加えることで、
「おみ」と「おみーさん」が同じ言語であることがわかる。

さて、久しぶりに「おみーさん」を作ってみた。
といってもみそ汁に残りご飯を入れて煮立たせただけ。
作ってみて大いなる間違いに気がついた、
「おみーさん」はこんなに汁気が多くなかった。
みそ味の硬いかゆのようだったのを思い出したのだ。
時間ができたら再度挑戦してみるべし。

最後に今でも町では「おみーさん」という言語が残っているのだろうか?
言語は急速に消失する。
一度ふるさとでフィールドワークしたいものである。


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この記事へのコメント

  • 三好家臣団

    ”おみーさん”思わず涙腺が緩みます。U氏は贅沢な卵入りが大好物でした。
    2013年01月18日 11:09

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